ネタバレレビュー
Written by madoka
※セリフやイベント等のネタバレが含まれますので、読まれる際はご注意下さい。
ストーリー
時は仁寿2年、それは後に唐と呼ばれる時代。
小さな寺院でひっそりと暮らしていた主人公の前に、ある日突然、天界の仙人である【観音菩薩】が現れる。
観音菩薩によると、主人公の手のひらに生まれた時からある、その痣のような紋章は【三蔵法師】の証であるというのだ。
三蔵法師とは、圧政や貧困に陥った当世を救う救世主として伝承されている者の名前。
元々乱世に心を痛めていた主人公は、世を救う書物であるとされる【経典】を得るため、天竺行きを決心する。
旅の共としてであった悟空、八戒、悟浄、玉龍。
天竺に近くにつれ、明かされていく旅の真の目的とは。
数々の事件に巻き込まれながら、一行は真実を求めて天竺を目指す。
全体感想
ゲームの詳細
PS2からの移植作品。
西遊記がモチーフで、主人公の名前は三蔵法師である『玄奘』なので、名前変換したいという方は注意して下さい。
内容は主人公の三蔵法師である玄奘、従者の悟空、八戒、悟浄、玉龍で天竺を目指すストーリーで、旅の途中で妖怪の妨害を受けつつ、一緒に旅をする中で徐々に惹かれていくという展開です。
キャラクター & システムについて
攻略対象は5人で、1人が隠しキャラ、そして悟空は八戒、悟浄、玉龍を攻略済じゃないと攻略出来ない真相ルートになります。
共通ルートは第一話から第八話の最初まで、その後の個別ルートが四話から五話あり、共通ルートでの好感度と村人などを助ける『お助けイベント』での徳の数値でルート分岐します。
この『お助けイベント』は毎回やらないといけないし、次の選択肢までのジャンプ機能が無いので同じシナリオを最低5回はプレイしないといけないので、同じ作業が苦手な方はこの辺りで嫌になってしまうかもしれません。
エンディングは全部で25種類と多く、キャラクターのエンディングは1つずつの計5つ、その他20種類は選択肢や徳の数値などで分岐するBAD ENDになります。
感想
PS2時代の作品なので今に比べると甘さは控えめかもしれませんが、その分、各キャラの抱えている悩みや背負っているものなど、話自体はかなり面白いし、各話の最初にOP、最後にEDと次回予告が入るので、乙女ゲーではなくアニメで観たいと思ってしまいました。
個別ルートに入ると選択肢がない話もあるので、余計に読み物やアニメっぽい印象を受けたのかもしれません。
ただ、唯一気になったというか、同じ西遊記ベースの『最遊記』が大好きな私の場合は、八戒と悟浄の設定が逆とか、森川さんがどちらにも出ているとか、色々比較してしまい、ストーリーに集中出来なかったのが凄く残念でした。
そこさえなければもっとオススメ度を高くしたと思いますし、『西遊記』ベースの作品に思い入れが無い方なら問題なく楽しめる作品だと思います。
悟空(CV:諏訪部順一)
キャラクター
三蔵法師の従者のひとり。
長い間五行山に封じられていたところを玄奘に助け出され、仲間になる。
大胆で余裕のある立ち振る舞いに反して極度の面倒くさがり。
やる気なし男。
体力値が低く、すぐに貧血を起こす。
じつは元天界の仙人で、大群を束ねる名将「斉天大聖」。
500年前に何らかの罪を犯したことによって地上の岩牢に封印されていたらしいが …… 。
内容
無事に天竺の経典の間に着いた三蔵一行。
玄奘が到着したことにより経典が光り出した直後から何故か悟空が苦しみ出し、そこに紅孩児が現れます。
本気を出した紅孩児相手に、八戒、悟浄、玉龍が次々とやられてしまうと、先程まで苦しんでいた悟空が玄奘のことを身を呈して守ろうとします。
しかし悟空もまたやられてしまい、玄奘は悲しみの中で経典を解放します。
その後、悟空の側に駆け寄った玄奘ですが、悟空の容姿が変わっていて …… 。
感想
諏訪部さんの俺様系の安定具合は流石ですね!
普段偉そうにしているキャラの照れた仕草にキュンキュンしまくりです。
悟空の内容なのですが、攻略条件が八戒、悟浄、玉龍をクリア済じゃないといけないので、真相編になっています。
西遊記ベースということで、五行山に封印されていたのを玄奘が助けるところからスタートし、その後も悟空と一緒に旅をしてきた玄奘ですが、そう言えば悟空が「斉天大聖」だった頃のことを全く知らないと気付きます。
500年前の天冥戦争の経緯、天界の思惑、そして悟空と二郎真君と木叉の関係など。
このゲームは『新説』と銘打っていますし、あまり詳しく書くとつまらなくなるので、内容についてはここまでにしたいと思います。
で、悟空編の内容より一番大変だった『No.25 絶望に抱かれて』のエンディングについて書かせて下さい!
これが出なくて出なくて、本気で泣きそうになってしまいました。
空いているスチルのマスから悟空ルートなのと、あるキャラに関係しているのは分かったのですが、まさかあんな序盤の選択肢をわざと間違えなければならないとは思ってもみませんでした。
だって第四話で選択肢を選んで、エンディングが発生するのが第十一話ですよ?
凄くないですか?
全25種類のエンディングのうち、このエンディングだけ本気で回収出来なくて、悟空編は5周もやってしまいました。
攻略サイトを運営しておいてあれなのですが、このエンディングをサクッと回収出来た方、本当に尊敬しちゃいます!
と、悟空編の感想でしたね。
悟空なのに如意棒やキン斗雲が一切出て来なかったり、体力が無いけど頭が良かったり、『悟空』をご存知な方なら「あれ?」と気付く部分が多いと思うので、その辺りを気にしながら他のキャラをプレイすると、悟空編で謎が回収出来ると思います。
キャラクター自体は俺様系で凄く魅力的なので、諏訪部さんの俺様系が好きな方は確実に好きになると思います。
- オススメのセリフ
俺は、お前が苦しむところも痛めつけられるところも、殺されるところも見たくない。
理由なんて、簡単だ。
楊漸の言うとおり、俺自身がそれによって苦しむことになるからな。
八戒(CV:羽多野渉)
キャラクター
三蔵法師の従者のひとり。
旅が楽しそうだから、という不純な理由で仲間になった、きれーなおねーさんが好きな軟派者。
運命を感じた女性は星の数ほどいるとか。
見た目が奇天烈だが、そのじつ義理人情に厚く、意外と紳士。
武器は暗器。
どこに隠しているかは知る人ぞ知る。
内容
いつも楽しそうに旅を続けている八戒は、何故か天竺が近くにつれて元気がなくなっていきます。
無事に天竺に着いた一行は、経典の間に着いた時に悟空がいないと気付き、悟浄と玉龍が悟空探し、八戒が玄奘を守ることに。
そして無事に経典を手にした玄奘は、八戒の悲しそうな声で「天竺になんか、一生たどり着かなければよかったんだ」と抱きしめられます。
その後、急にめまいが襲ってきた玄奘は、八戒に抱きしめれられながら「 …… 無事に役目を果たしたようだな」という知らない人の声と、八戒の「ごめんな …… 玄奘」という声が聞こえ、玄奘の意識はなくなっていき …… 。
感想
八戒素敵すぎでしょ!
羽多野さんの声で「 …… あんただけだよ」の破壊力、最高でした!
八戒編は、八戒が実は乾陀羅(ガンダーラ)の第6皇子で、国を救うために経典を手に入れようと三蔵たちを騙していたという話です。
元仙人のナタクは二郎真君と木叉に裏切られ、その2人に復讐するために乾陀羅を利用しているので、八戒の裏切りの話よりナタクと二郎真君と木叉の話の方がある意味メインだったりします。
八戒は最初、三蔵法師なんて伝承でしかないという軽い気持ちでいて、実際に自分の前に現れた三蔵は意外にもカワイイ女の子で、だますのは主義に反すると思ったけど皇子として役目は果たすつもりだった。
けれど早々にみんなのことが好きになって、仲間を裏切ってまで自分の役目を果たす意味が見えなくなってしまった。
さらに玄奘に惹かれていったけど、やっぱり仲間を裏切ることになっても自分の国や家族に幸せになって欲しかったという流れです。
私の場合、最初から八戒は素敵だろうと見当をつけていたので、悟浄と玉龍の後に攻略したのですが、予想通り2人より遥かに甘い展開で、八戒編は西遊記ベースだけどちゃんと乙女ゲーでした!
基本的に軽いのですが、たまに見せる寂しい表情や相手を思いやる言葉、そしてまさかの【桃色旅先案内、特選裏の歓楽街】再登場!
これは身分を隠していてもモテるのは当然で、しかも羽多野さんの声ですよ?
素敵に決まっていました。
先程も書いた通り、悟浄編と玉龍編より糖度がかなり高いので、最初に攻略出来る3人の中では最後に攻略するのをオススメします。
- オススメのセリフ
解毒剤なんて、単なる口実。
そんな必要がなくたって、オレはあんたにキスしてた。
もう、我慢するのも抑えるのも嫌なんだ。
あんたが嫌がっても、ここがどこでも、もう離したくない。
悟浄(CV:近藤孝行)
キャラクター
三蔵法師の従者のひとり。
誠実で実直な元警吏。
三蔵法師の来訪を待ちわび、快く仲間になる。
規律に重きを置く正義の人だが、意外と好戦的で頭に血が上りやすい。
【三蔵法師】という存在を敬愛しており、盲目的に玄奘に忠誠を誓う。
武器は剣。
幼い頃から剣術を習っていたこともあり、相当の腕前。
接近戦を得意とし、遠方から補助する八戒とは戦闘においては相性がいい。
内容
真面目で正義感が強い悟浄のことを頼りにしている玄奘。
玄奘は悟浄に誠実さで助かっていることと、赤い瞳が綺麗だとを伝えると「 …… 俺は、あなたにずっと言えなかったことがあります。俺ほど、この神聖な旅に向かない人間はいません」と言い出します。
よく話を聞いてみると、悟浄は昔罪を犯し、その時から左目が赤く染まってしまった。
そして自分は果たさなければいけない約束があり、この旅は贖罪の意味を持っていると言い …… 。
感想
女性慣れしていないヘタレキャラの動揺っぷり!
こういうのにキャーキャーしてしまうのは、ある程度年をとった証拠かもしれません。
悟浄編の内容は、悟浄は子供の頃に流行病で死んでしまう予定だったけど、観音様と「世を救う旅を成功させる」と約束をしたので死なずに済んだ。
しかし悟浄の代わりに姉が犠牲となったことで自責の念にかられてしまい、以後、三蔵法師の来訪を心待ちにしていたという話です。
もともと身体が弱かった悟浄は、姉の死により自分が助かったので、とにかく真面目で人助けに一生懸命で、そして姉の尻に敷かれて育ったから女性を苦手としていて、三蔵法師である玄奘だけは盲目的だという設定なんです。
だから基本的に「玄奘様」ばかり言っているワンコ系なのですが、意外と暴走するタイプなので、八戒とのやり取りは凄く楽しめました!
で、悟浄編での一番の見所は、オアシスで玄奘が妖怪に襲われてしまうシーンだと思います。
悟浄は玄奘を守ろうとしますが、結果的に玄奘が死にそうになり、悟浄の様子がおかしくなってしまうという流れなのですが、この当たりから悟浄の過去やトラウマなど悟浄編の核心に迫るので、ただ真面目なだけじゃない悟浄が見られると思います!
甘さは控えめではありますが、女性に対してヘタレな悟浄がラストでは一生懸命頑張っているし、とにかく玄奘が大好きな悟浄を堪能出来るので、ヘタレワンコ系が好きな方にオススメです。
近藤孝行さんの声で純情キャラということもあり、私の場合は終始某副部長を思い出してしまいました。
- オススメのセリフ
あなたと一緒にいることで、俺がどれだけ救われているか。
どれだけ、温かい気持ちでいられるか。
俺があなたをどれだけ愛しているか …… 。
あなたはわかっていない。
玉龍(CV:宮田幸季)
キャラクター
三蔵法師の従者のひとり。
泉に住む龍神と噂されていた、水術使いの青年。
その出自、正体は謎めいて、妖怪か仙人かも不明。
水を操る術を得意とし、その力は従者の中でも随一を誇る。
しかし敵と認識する判断が危うく、気に食わないものは誰でも排除しようとする。
判断基準が【玄奘を傷つけるか否か】に尽きるので、玄奘の言葉には素直で従順。
玄奘を【お師匠様】と呼び慕うが、何故その呼び名なのかは謎。
内容
いつも玄奘のことを【お師匠様】と呼び、お師匠様至上主義な玉龍。
偶然立ち寄った村で火事が起き、玉龍の術を使えば火を消せるのでお願いした玄奘ですが、急に玉龍の様子が急におかしくなり、そして「だめ。お師匠様、逃げなきゃ。ここにいたらまた、お師匠様は …… 」と玄奘を連れて走り出します。
しかし玄奘は村人救出のため火事場へ戻り、悟空たちもやってきて何とか火は消し止められますが、玉龍の様子はまだおかしいまま。
様子を見にいった玄奘はそこで玉龍には昔、【お師匠様】と呼んでいた人物がいて、その人と自分は似ていて、だから玉龍は自分を守ってくれる。
そんな風に思うようになります。
感想
玉龍と銀閣の組み合わせ、最高じゃないですか!
そしてキャラクター的に宮田さん可愛いVer.かと思っていましたが、意外にも色気のあるVer.だったのでいい意味で驚いてしまいました!
玉龍編の内容は、玉龍は500年前に金蝉子を【お師匠様】と呼んで慕っていて、その生まれ変わりである玄奘を【お師匠様】と呼んでいる。
でも金蝉子を守れなかったから500年の間ずっとひとりで修行をし、玄奘の役に立つことだけを考えて、感情も感覚も欠落しているという話です。
いつでもどこでもお師匠様主義の玉龍は、玄奘の役に立てないことが凄く嫌で、夜中にこっそり出て行って玄奘のために妖怪退治をしているとか、玄奘を傷つけた村人にキレたり、感情も感覚も欠落しているというけど、本当はその気持ちを表す術を知らないだけで、疲れている身体でも玄奘のために一生懸命な玉龍が健気で可愛いんです!
西遊記をご存知の方は、玄奘が金蝉子の生まれ変わりだということを前提としてプレイしていると思いますが、玉龍が心に思っているのは【お師匠様】であって、自分自身を見てくれている訳ではないと玄奘が悩み出す辺りから、少しずつ面白くなってくると思います。
そして玉龍も自分の気持ちが分からず、敵である銀閣に相談するのが可愛くて、感情の変化に乏しく無表情で無口な玉龍が少しずつ感情を表に出すようになるので、そこがある意味玉龍編で一番の見所でした!
ただ、キャラクターのところに【水術使いの青年】とありますが、玉龍は青年というよりは少年という印象なので、甘さはほぼありませんでした。
ですが、玉龍編は甘さよりも玉龍の成長を見守る?ストーリーだと思うので、これで良かったのかもしれません。
逆に玉龍が八戒みたいになったら嫌ですからね。
でも玉龍は最初から最後まで健気で可愛いので、悟浄とは違った可愛い番犬タイプがお好きな方にオススメです。
- オススメのセリフ
…… 今なら、わかるよ。
お師匠様じゃなくても関係ない。
あなただから、守る。
あなたが、お師匠様でよかった。
蘇芳(CV:近藤隆)
キャラクター
冥界に与している青年。
誰にも変わらぬ態度で明るく、気安い。
元京劇の役者で、演技も相当のもの。
その一環で【蘭花】も演じていた。
人間の身でありながら妖怪を従えているが、その目的や出自は不明。
内容
再度蘭花たちに襲撃された三蔵一行ですが、玄奘と蘭花が崖から落ちてしまいます。
蘭花に助けられた玄奘は、洞窟で手当てをしてもらい眠りにつくと、目を覚ました所は洞窟ではなく牢屋の中。
そこは冥界で、声をかけてきた見知らぬ青年が蘭花(芸名)=蘇芳(本名)だと分かります。
捉えられてから数日が経ち、蘇芳と共に牛魔王のもとへ向かった玄奘は、蘇芳と共に天竺へ行き、経典を冥界へ持ち帰るように言われます。
さらにそこで500年前に起きた天界戦争での第三勢力の妖怪の代表の生まれ変わりが蘇芳で、蘇芳の左手にも同じ資格を持つ者の証である紋章が刻まれていることがわかり …… 。
感想
何てことだ!悟浄が当て馬とは。
悟浄の扱いって一体 …… 。いや、いいんですけどね。
それにしても近藤隆さんの声の「離れたくないよ。ずっとあんたの傍にいたい」のセリフは凄く素敵でした!
蘇芳編の内容は、蘇芳は元女形役者ですが、左手の紋章があることで子供の頃に冥界に連れ去られてしまった。
そして金閣と銀閣に育てられ、妖怪にも良い人?が多いから、今の冥界の状態を変えようとしている。
それには経典の力が必要で、玄奘とは敵になるけど互いに惹かれあい、ロミジュリ状態になってしまうという話です。
蘇芳は玄奘と共に過ごすうちに、自分の考えと玄奘の考えが最終的には同じだと気付くんですが、経典を持ち帰らないと牛魔王や紅孩児たちに金閣銀閣を殺されてしまうし、金閣銀閣が地上に逃げられたとしても、他の妖怪たちが蘇芳への見せしめとして殺されてしまう。
普段強気なのはわざとで、その先の作戦を相手に見せないよう考えて行動している意外と冷静な部分があり、そこが凄く魅力的でした!
そして他のルートと違って冥界がメインなので従者のみんなの登場回数は少なめです。
その分、最初から最後まで金閣銀閣が出ていて、基本的にボケの2人なのでギャグ要素多めの内容になっていました。
子供の頃から育ててきた2人は、蘇芳の成長を見届けるとか、蘇芳と玄奘の関係でお赤飯の心配とか、私はこの2人のやり取りが凄く好きでしたが、逆に合わない方は全く面白くないルートになってしまうかもしれません。
ロミジュリ設定なので甘さよりは切なさ多めで、いい雰囲気になると邪魔されるというお約束なストーリーではありますが、さすが誰か1人をクリア済じゃないと攻略出来ないだけありました。
近藤隆さんの女性声を久しぶりに堪能出来たし、好きな子ほど泣かせたくなってしまうタイプが好きな方は気に入ると思いますよ。
- オススメのセリフ
…… 手、熱いね。
はは、オレは熱が出てるんだから当たり前なんじゃないの?
それでもあんたの手が熱く感じるんだから ――― 。
前の時と違って。オレは意識されてるって思っていいのかな。