ネタバレレビュー
Written by madoka
※セリフやイベント等のネタバレが含まれますので、読まれる際は注意して下さい。
ストーリー
寛永十年。
駿府城で徳川忠長が自刃したことから、すべては始まった。
江戸に暮らす料理茶屋の娘は、ある日、偽の姫として、花嫁行列を演じることとなる。
駿府城までの東海道の旅。
困難を乗り越えて行く中、護衛たちとの間にも絆が芽生えていく。
しかし、花嫁行列の裏にはもうひとつの思惑が隠されていた。
天下五剣が一振り「数珠丸」を密かに運ぶこと。
知らずそれを手助けした一行は、無事に江戸に戻った後も、不思議な縁で結ばれることになる。
天下五剣を授かる江戸城御前試合を前に、活気づく江戸の町。
今から語るのは、そこで彼らが再び相まみえることから始まる、数多の物語。
そして、彼らが生きてきた証である、語られざる物語。
夜ごと語って、綴りましょう。誰もが忘れるその前に ――― 。
全体感想
ゲームの詳細
これぞ『剣が君』の集大成と言っていい作品で、私はクリア後に本編を再プレイしたくなりました!
この作品は、タイトル通り100種類の物語を読み進める短編集のようなもので、キャラクター毎のエンディングというものは一切ありません。
まずゲームを始めると、最初は書庫に『○○の書』と書いてある書が11種類あり、最初から読める書は2種類だけです。
そして書を選択すると、その中に物語のタイトルが書いてあり、それを選択すると物語を読むことが出来ます。
物語を読了していくと、順に書が開放されていき、100種類の物語を読み終えると、101番目の物語(12番目の書)が追加され、それを読んで終了という作品で、中にはキャラクター毎の書や、サブキャラクターの書もあります。
もう少し詳しく書きますと、各物語には選択肢やキャラクターのしおりが出てきます。
選択肢はどれを選んでもさほど影響は無く、選んだ選択肢により貰える勾玉の数が変わってきます。
この勾玉集めがこのゲームの一番の攻略?という感じで、選択肢を選んだ時や物語を読了した時、ゲームを起動した時に勾玉が貰え、その勾玉を消費してオマケを開放するというシステムです。
なので、各攻略ページも勾玉を効率良く集めることをメインにして記載しています。
次に先ほど書いたキャラクターのしおりについてですが、物語を読んでいくと、各キャラクターの絵が描かれたしおりが出てきます。
しおりを選ぶと、選んだキャラクター視点のシナリオに進んで行き、しおりを10枚集めると、キャラクター毎の貸本を読むことが出来ます。
次にシステム面ですが、これが本当に不便で。
このゲームは何かしらの書を選び、その中の物語を読んでいくゲームなのに、スタート画面で書が選択出来ないんです。
プレイしてみると分かるのですが、『初めから』にすると、主人公の名前選択や誕生日設定をするところから始まり、そこから書庫に移って、書を選択出来ます。
なので最初はいいのですが、例えば『○○の書』を最後まで読み終えてその日は終了したとすると、次の日にプレイする時に、スタート画面から書庫に行けないので、また『初めから』で主人公の名前設定から始めるか、それともどこかの物語の途中でセーブしたものを一旦ロードし、そこから中断して書庫に移動するかになるんです。
一気にプレイする方は気にならないかもしれませんが、私は何日かかけてプレイしたのでちょっと面倒に思ってしまいました。
でも毎回『初めから』をあえて選び、誕生日をプレイする次の日に設定して、次の日に起動した時に勾玉を多めに貰っていましたけど。
そしてキャラクターのしおりについてですが、どのキャラクターがどの話のしおりを回収したか分かり辛く、『済』みたいな印が付けば分かり易かったと思うのですが、順番に回収していかないと分からなくなるかもしれません。
ということで、ただ読み進めるだけなので乙女ゲーというのはどうなのか?と思ってしまったことと、システム面が不便だったので、オススメ度はあまり高くしませんでしたが、今作は普通のFDとは違い、より深く『剣が君』の世界を理解することが出来るので、是非『剣が君』が好きな方は手に取ってもらいたいです!
※今回のレビューは短編集なので、各キャラクターの書のみを記載しています。
九十九丸(CV:小野友樹)
キャラクター
陸奥国から江戸へやってきた修行中の侍。
居合の伝書を授かるため、御前試合で一番刀を目指している。
過去や未来に執着せず、今を生きたいように生きる性格。
護衛として知り合った侍たちとも手合わせを望むほど、剣に対して一途。
彼岸花の書 感想
九十九丸のお父さん素敵です。
見た目も繊細な感じで、九十九丸より格好良く見えるのは気のせいでしょうか?
内容は、九十九丸の身に宿るマレビトの力と九十九丸に過去の記憶が無いことです。
15歳の時に命を落とし、禁術で蘇った九十九丸は、身体の半分をマレビトの力で生かされていたので、過去の記憶がなく、九十九丸の本当の両親、師匠である無堂來世の想いなどがメインで、他に主人公との平穏な日々の話がありました。
本編をプレイした時から思っていたのですが、成長した九十九丸の姿が個人的にあまり好みではなく、料理茶屋を手伝っている九十九丸は幸せそうではあるのですが、15歳のままの見た目の方が見慣れているし、本編の時にいきなり大きくなったので、今回も違和感を覚えてしまいました。
そして本編の感想にはヤンデレがダメだったと記載しましたが、九十九丸=ヤンレデというイメージが出来ていたので、成長した九十九丸ならマレビト姿の方がより九十九丸らしいと感じたのかもしれません。
そんな九十九丸編の中で一番の見どころは過去編で、鈴懸編にも出てくる九十九丸の父親視点や、九十九丸の師匠である無堂來世が過去の記憶が無い九十九丸に本当のことを話す展開なのですが、この過去編を終えると、色々不運な運命の九十九丸には幸せになってほしいと感じると思います。
今回の九十九丸編は、甘さより設定をより理解する内容になっていたので、色々分かった状態でもう一度本編をプレイしたくなりました。
- オススメのセリフ
意識が戻れば、いつかここに留まってはくれなくなると思っていた。
現世を思い出せば、恋しさに涙で袖を濡らすだろうとも。
だから、気づいていてキミを離さなかった。俺のマレビトとしての力を使って絡め取ろうとした。
俺が、キミを離したくなかったからだ。一人に、なりたくないんだ。もう …… 二度と。
螢(CV:KENN)
キャラクター
吉備国出身の御用聞き。
強気で口が悪く、ぶっきらぼうな物言いになりがちだが、本当は頼られると親分肌を発揮する人情派。
人助けのため花嫁行列に参加したが、その件も落ち着き、今は御前試合での剣取りを目指している。
山吹の書 感想
人物詳細にある『気障に口説く』の螢が可愛くて可愛くて!
私はKENN様の囁きを聴いただけで、ニヤニヤがおさまりません。
内容は、螢が人間ではなく鬼であることについてです。
人鬼の乱で鬼が敗戦してから、鬼は刀を取り上げられ、肩身が狭くなり、虐げられ隠れて生きてきた。
なので、螢は鬼であることを隠して御用聞きとして生活していますが、鬼の誇りを取り戻し、鬼であることを隠さず、歩けるようになることを望んでいるという話がメインで、他に鬼族の長となった話や螢の両親について、金四郎さんとの出会いなどもありました。
本編の時から螢は人間と鬼族が一緒に暮らせる日を望んでいますが、人間は鬼というだけで怖がったり、殺そうとしたりするので、普段は鉢巻きでツノを隠して御用聞きとして生活していて、主人公と仲良くなっても螢は自分が鬼だとなかなか告げることが出来ない。
エンディングの種類によっては悲しい結末になってしまうこともあるので、私の場合は、螢編をプレイしていると左京さんのことを思い出し、左京編をプレイしていると螢のことを思い出してしまいました。
螢と言えば、すぐに「バカ」と言って照れるところが魅力だと思うので、今回もその可愛さを存分に堪能して欲しいです!
そして本編でも思っていましたが、金四郎さんが良い味出しているので、螢の過去編オススメです。
- オススメのセリフ
オレたち、昔っからよく喧嘩したよな。オマエも意外と頑固で折れねえもんだから、しょっちゅうぶつかってよ。
でも、こんなオレに真正面から向き合って、すべてを受け入れてくれた。
オレの正体も、オレの夢も。受け入れて寄り添ってくれた。
だから、何があってもオレは前に進もうと思ったんだよ。それが、どんな道だろうと ――― 。
黒羽実彰(CV:前野智昭)
キャラクター
備前国出身の隠れ切支丹。
幼い頃に母親を失っている。
穏やかだが、考えが読みづらい独特の雰囲気を持つ。
他人との間に一定の距離を置いており、秘密主義者。
剣を捨てることを心に決めており、花嫁行列を最後の仕事と考えていたが …… 。
菖蒲の書 感想
本編の時から私は実彰さん派なので、今回も最初から最後まで楽しく読み進められました!
そして私は実彰さんと縁さんのコンビが凄く好きです!
内容は、実彰さんの懺悔と贖罪の念についてです。
かつて御前試合で三度も一番刀になり『剣聖』と呼ばれていた実彰さんは、罪人だと言われれば妖怪でも人でも斬ってきた。
しかし相手が本当に罪人か確認せず、言われるまま人殺しをしていたことに気付き、懺悔と贖罪の念にかられてしまったというのがメインで、他には切支丹狩りの話や、実彰さんの両親について、料理茶屋の店主になった話などがありました。
実彰さんは、西班牙人の父と日本人の母親の間に生まれたことにより、世間の目は厳しく、虐げられ、切支丹狩りが起きるという辛い話もあり、特に実彰さんと縁さんの組み合わせになると、余計に切なくなってしまいました。
そして今回は先が分かっているので「この後、死んでしまうのか」とさらに悲しくなるという …… 。
でも、そんな実彰さんだからこそ私は好きなんですけどね。
ということで、実彰さん編は甘さより辛さの方が多い内容だったと思いますが、二人で料理茶屋を営んでいる話はどれも幸せそうですし、辛い話が苦手な方も楽しめるようになっているので安心してプレイして欲しいです。
今回はハバキちゃんが重要な情報を握っているので、そこにも注目して下さい。
- オススメのセリフ
この剣は守るためにも振るえると、あなたは気づかせてくれた。
贖罪のため振るうこの剣が、二度と過ちを起こさないように。そのためにも、わたしにはあなたが必要だ。
あなたを守れていると思えばこそ、私は己を見失わずに済む。だから ――― 。
守らせてくれないか。もっと側で。これから先も、ずっと …… 。
縁(CV:置鮎龍太郎)
キャラクター
武術の腕は一流なのに、性格はいい加減で能天気。
だが時折、別人のような真面目な顔を覗かせる。
実は江戸幕府の公儀隠密で、花嫁行列の真相を知っている数少ない人物。
江戸に戻ってからは、主人公のことが忘れられずにいる。
梅の書 感想
相変わらず縁さんは不器用で切なくなってしまいます。
内容は、縁さんの日の本の国に住まう民を守りたいという気持ちです。
縁さんは、身体の弱い兄を支えようと努力してきたのにもかかわらず、八百長試合で一番刀となったので、三日月宗近の本来の力を使いこなせないけど、日の本の国に住まう民を守りたいと願う心の葛藤がメインで、他には本来真面目で不器用な縁さんが今の状況なってしまった経緯や、次期将軍候補と町娘の身分違いの恋、そして徳川の身分を捨てるという話でした。
本編の時もそうでしたが、縁さんは器用そうに見えて実は努力家で、一生懸命努力してきたことが報われないというのが切なくて …… 。
主人公との幸せな生活という内容も良かったのですが、それよりも、縁さんが本来望んていたこと、そして見た目や言動とは違った思いやりや優しさなどが描かれている話の方が個人的には好きでした。
そして本編では怪奇ルートが好きだと書いておきながら、今回は記憶を無くしてしまっているルートはあまり好きではなくて、あの縁さんが本来の姿なのかもしれませんが、辛いことを乗り越えてきた縁さんの方がより魅力的に感じました。
縁さんは攻略キャラクターの中で実は一番真面目だと個人的には思っているので、見た目や言動と中身のギャップを楽しんでもらいたいです。
余談ですが、私は縁さんも好きですが兄である辰影さんも好みでした(笑)
- オススメのセリフ
…… 貴方のような相応しい人間に、私はなれない …… 。
鈍らだというなら、私自身だ!どれほど研いだところで斬れる刀になれるわけがない!
相応しくもない者に、なぜ無理やり役目を押し付けるのです!貴方も …… 父上も …… 兄上も …… っ。
貴方に期待されたところで、応えられるわけがない!
鷺原左京(CV:保志総一朗)
キャラクター
復讐のために江戸にやってきた、山城国伏見藩の旗本鷺原家の嫡男。
物腰は穏やかだが、裏の世界での日々から処世術に長けている。
江戸で復讐相手を探すうち、花嫁行列で知り合った人々と不思議な縁で繋がり続けることに。
紫陽花の書 感想
左京さん …… このゲームはどのキャラも背負っているものがありますが、左京さんは特に辛くて …… 。
内容は、本編同様、仇討ちの話です。
左京さんの姉が出産のために鷺原家に戻ってきて、両親と共に安産祈願に出掛けますが、その帰りに殺されてしまいます。
お姉ちゃん子だった左京さんはちょうど熱を出して一緒に行かなかったことを後悔し、仇討ちをするために色々やってきたという話で、他にも斬鉄に破れて妖刀に魅入られた話や寺子屋を営む話などがありました。
左京さんは幼い頃に家族を殺され、仇討ちのために色々な苦労をしてきた人物なので、夜中にうなされていたり、本編では左京さんに懐いた矢ノ彦を殺してしまったりするので、そんな辛い内容より、寺子屋で子供達に勉強を教えたり、楽しそうに過ごしているしている方がいいなぁと感じました。
でもオススメのセリフは切ない内容のものを選んでいるんですけどね(^◇^;)
特に左京さんでオススメの場面は、紫陽花の書ではなく、山茶花の書で左京さんが女装する時で、女装した時の美しさと、嫌がらせの相手を黙らせてしまうほどの威圧感がとっても良かったです!
以下のセリフのように本編の時から辛いイメージが強かった左京さんですが、今回は幸せそうな左京さんをたくさん見ることが出来たので、個人的には大満足です。
- オススメのセリフ
香夜さん …… ありがとうございます。
私の人生は怨念と血に塗れたものでした。だが、あなたと居る時はひとときの夢を見ることができた ――― 。
有為の奥山、今日越えて、浅き夢見じ、酔ひもせず …… 。
今こそ、有為の奥山を越えましょう …… 。遠きところよりあなたの幸せを願います ――― 。
鈴懸(CV:逢坂良太)
キャラクター
口減らしのため高尾山に捨てられ、天狗のカルラに育てられた孤児。
妖怪たちと暮らしながら医術と剣術を学んだ。
素直で明るく優しいが、純粋ゆえに間違っていると思ったことに対しては絶対譲らない一面も。
花嫁行列の旅を経て、人間の世にますます興味をもつようになった。
金盞花の書 感想
今回も鈴懸は本当に可愛いし、個人的にはカルラがかなり好きです。
内容は、妖怪に育てられた鈴懸が、人間と妖怪が住む日の本の国を守ろうとする話です。
妖怪を悪いものだと決めて退治する人間を止めたかった鈴懸が、一番刀になったことで、妖怪を斬らなくてはならなくなったことに葛藤するという内容で、他に鈴懸がカルラに拾われてから江戸へ向かうまでの話や、江戸の街で主人公と穏やかに過ごす話などでした。
鈴懸は今回も『純真』という言葉がぴったりの良い青年で、天狗に育てられた人間だからこそ、人間と妖怪分け隔てなく接し、共存を望んでいます。
そして鈴懸が町の医師として生活しているルートの場合、町のみんなに慕われていましたし、主人公への想いを恥ずかしがらずに素直に伝えるタイプなので、周りが呆れちゃう程甘い雰囲気を醸し出していました。
個人的には過去編が一番オススメで、カルラが鈴懸を本当の子供のように育てているのを見ることが出来ましたし、マダラとハチモクとの関係など、鈴懸のベースとなっている部分を読むことが出来たのが凄く良かったです!
他に一番刀になるルートより、町の医者として主人公と穏やかに過ごすルートの方が好きでした。
キャラクター的に幼いイメージなので、夫婦というより付き合ったばかりの恋人同士という印象を受けましたが、人物詳細のセリフも医者としての鈴懸と、純真で真っ直ぐな鈴懸の両方を堪能出来ましたし、以下のセリフのように今回も鈴懸はとっても可愛くて仕方がありませんでした!
- オススメのセリフ
えへへ。今、すごく君を抱きしめたくなっちゃったんだ。
僕、もう焦ったり不安になったりしない。だって僕はこの江戸で、ずっと香夜と一緒に暮らすんだから!
ゆっくり色んなことを知って、色んな所に行きたい …… 君と一緒に。