ネタバレレビュー
Written by madoka
※セリフやイベント等のネタバレが含まれますので、読まれる際は注意して下さい。
ストーリー
高校の入学式の日に事故に遭ってしまった主人公は、気が付くと見知らぬ学園の敷地内に立っていた。
そこはオチコボレの魂たちが通う死後の学園・NEVAEH(ネヴァー)学園。
この学園では、校則を守りイイ子にさえしていればどんなオチコボレの魂でもやがて卒業=人生ヤリナオシできるという。
ウサギ頭を被った怪しげな男に死を告げられ、夢見心地のまま入学式へと参加されされることになってしまう主人公。
しかしそこへ突如、けたたましい爆音が鳴り響く。
その音を合図に始まったのは、学校に抗うワルイ子チーム・BAD APPLESと学園の風紀の番人・風紀委員による学園戦争だった。
戦いの喧騒の中、主人公は赤い髪をした少年と出会う。
少年は主人公に向けて真っ直ぐに問いかけてきた。
「 ――― お前、イきたいか?」
全体感想
ゲームの詳細
土屋俊輔さんのBGMだということと声優さんが好みだったので購入しましたが、とてもメッセージ性の強いゲームというのが一番の感想です。
内容は『死後の学園の魂身恋愛ADV』というジャンルなので、主人公はいきなり死んでしまい、学園で出会った人と恋に落ちる話です。
と言っても死後の世界で出会っているので、その辺りが普通のゲームとは大きく違います。
このゲームは絶対的な文章量や説明が不足しているため1周目はもしかしたら分かり辛いかもしれないので、ここに少し説明を記載しておきます。
主人公が強制的に入学した死後の学園であるNEVAEH学園では、校則を守れば守るほど自分としての記憶や姿を失くしていきます。
自分を失くしていくと学園がイイ子と呼ぶ存在になり、自分を失くしきり、完全なイイ子になった生徒が最後に行き着くのが …… 卒業。
学校に抗うワルイ子チーム・BAD APPLESは、『卒業=人生ヤリナオシ』なら『退学=生還』を意味すると考え、自分を失わないように校則を破り続け、『退学』を目指している。
一方風紀委員は校則を守らないワルイ子を矯正し、イイ子にしようとするけど、風紀委員になると自身は卒業出来ないという話です。
まずはゲームの説明を。
攻略対象は5人で攻略制限はなく、どのキャラからでも攻略することも可能です。
ゲーム開始後『ワルイ子サイド』と『風紀委員サイド』のどちらに進むか選択し、その後はマップ選択と禁忌魂触システムのみでルート分岐します。
第5話までは各サイド共通で6話以降は8話または9話と最終話までが個別ルートになります。
エンディングは各キャラクター2つずつで、一つは現世で出会うエンディング、もう一つはNEVAEH学園に残るエンディングです。
システム面は選択肢が無いにも関わらずジャンプ機能が無かったのと、ちょっとだけ違うという理由でスキップ出来ないのが残念な点でした。
それとネタバレ回避の重要なバージョンアップパッチが配布されているので、プレイ前に必ずインストールして下さい。
次はゲームの独自のイベントである禁忌魂触システムについて。
これはゲーム内で説明がありますが、各キャラクターをタッチすることによって、相手の心の中や過去を主人公が見てしまうというシステムです。
このゲームではこれが選択肢の代わりになっていて、相手が嫌がる部分をタッチし続けるとバッドエンドになり、大丈夫なところを触るとエンディングまでたどり着けるというものでした。
正直、心の中に触れるのに裸になる必要があるのかは疑問ですが、これをクリアすると彼視点の独白を見ることが出来るのは良かったと思います。
このゲームに登場するキャラクターたちは、何かしらの闇というか暗い過去を背負って死んでしまっているので、正直明るい話ではありません。
内容は短めで謎のままの部分や説明が足りない部分が多く、死後の世界の話なので予想出来ると思いますが、2人とも現世で出会うパターンと、片方が生まれ変わって出会うパターンがあるので、そういうのを受け入れられないという方はプレイしない方がいいと思います。
シナリオ自体は面白いのですが、プレイしてみると凄く惜しい部分が多いというか、もう少し深く掘り下げて欲しいと思う部分が多かったので、それがなければもっとオススメ度を高くしたと思います。
私はサブキャラクターたちが好きで、その後どうなったのか気になりましたし、攻略出来ないというのが非常に残念だったので、もしFDが発売されることがあれば是非BAD APPLESのメンバーと先生たちを攻略対象にして欲しいです!
アルマ(CV:櫻井孝宏)
キャラクター
ワルイ子チームのリーダーをしている赤い髪をした少年。
ポーカーフェイスでなにを考えているか分かりにくく口数も少ないため怖い人に思われがちだが、その意志の強さとカリスマ性からワルイ子チームのメンバーたち皆から慕われ信頼されている。
学園にやってきた際に持っていた持ちモノは『赤い糸』。
内容
サンズの一件後、BAD APPLESのみんながバラバラな状態になってしまったある日、ミーティングルームからアルマ、ナラカ、ヒガの話す声がし、アルマは「今は誰も …… 部室棟の外に出るな。もし、出ようとしている奴がいたら …… 止めてくれ」と言い残し去っていってしまいます。
心配になった主人公はアルマを追いかけますが見失ってしまい、そういえばアルマが“鍵”を探していたのを思い出してある場所へ向かいます。
するとそこにいたアルマは様子がおかしく、「どこへ行ってた ――― ?先生に歩いていいって言われたのか?もしまた、昨日みたいな発作が …… 」と主人公と誰かを間違えているようで …… 。
感想
これ絶対にわざとでしょ!!!!「まだまだだね」って皆川さん!!!!!
あ、ごめんなさい。アルマ編の感想です。
アルマには幼馴染の女の子がいて、おじいさんとおばあさんになってもずっと一緒にいると約束していたけど、その子は病気で死んでしまった。
約束を守れなかったアルマはそのことを悔い、学園に持ってきたものはその子との思い出の赤い糸だった。
そしてアルマはイイ子になっていなくても、暫く前からその子のことを思い出せなくなっていて、姿も朧げで名前さえ忘れているという話でした。
ハッキリ言いますね。アルマ編の内容は途中から予想通りに進んでいくので、感動とか切ないとかそういうのを感じることが出来ませんでした。
アルマは主人公のことを幼馴染と重ねるので、途中の内容が伏線を通り越してネタバレになってしまい、先の展開も読みやすかったことが原因かもしれません。
私は予想通りという感想ですが、もしかしたらアルマ編の内容は受け入れられない方もいるかもしれません。
内容は別として、アルマは凄く真面目で努力家タイプで、みんなの苦しみや責任を一人で背負おうとしていたり、好きな人を救えなかったし約束も守れなかったと哀愁漂う感じなので、櫻井さんの優しい声と相まって魅力的ではありました!
そして主人公はアルマが自分のことを見ていないと分かっていても、アルマが幼馴染のことを忘れていないと確認するために自分が使われることを容認する辺りは、切ないというより主人公が健気だと感じてしまいました。
なので先の展開を考えず、ただ黙々とプレイしていたらもっと感動したり切なくなったり出来たのかな?と思います。
アルマ自体はとても魅力的なキャラクターなので、好きになる方が多いと思いますよ!
- オススメのセリフ
○○、俺もお前に伝えたいことがたくさんある。
ああ。伝えたいし、伝えられたい。もっとたくさんのことを、自由に …… 思うままに …… 。
でも今の俺はその前にやるべきことを何も為せていないと思う。だから今は …… 伝えられない。
待っていて …… くれるか …… ?
ヒガ(CV:諏訪部順一)
キャラクター
ワルイ子チームの一員である白い特攻服を着た大柄な少年。
アルマをアニキと呼び、兄のように慕っている。
ちょっと古い雰囲気の堂に入った不良少年という印象だが、彼が今のように振舞うようになったのはこの学園にやってきてからで、元々は今とは色んな意味で真逆のタイプだったらしい。
ただし人相が悪いのは元から。
学園にやってきた際に持っていた持ちモノは『白球』。
内容
サンズの一件で、意気消沈してしまったBAD APPLESのメンバー。
そんな中、ヒガは一人で何とかしようと行動に出ますが、心配した主人公は「もう、オレにつきまとうな。 …… 迷惑だ」と言われてしまいます。
しかし主人公は、いつもヒガに助けられて嬉しかったから今度はヒガのために何かしたいと考えます。
そんな時、ヒガは『破れない校則』以外にアルマが禁止している『理科実験室に入っちゃダメ』という校則を破ろうとしていることが分かり、ナラカと主人公は急いで止めに行きますが …… 。
感想
諏訪部さんの「バーカ」というセリフ!
色々なゲームで出てきますが、その度に私はドキドキしちゃうんです! もう条件反射ですかね?
内容は、ヒガは愛人の子で、母親が死んでしまったので本妻の家に引き取られ、ヒガには新しく頭も良くて格好良くて優しい兄が出来た。
兄はヒガのヒーローで、自分は周りから色々言われて迷惑ばかりかけてしまうから、早く大人になって恩返しをしたい。
そして兄の夢は甲子園に行くこと、自分は兄の夢を叶えることだったけど、何も恩返し出来ずに死んでしまった …… という話でした。
ヒガさんは自分よりも他人を大切にしてしまうので、新しい母親と兄に想いを返したいけど、自分が役立たずなのがわかるから焦ってしまう …… 。
BAD APPLESでもアルマの言うことを聞いていたけど、本当は自分のやることが空回りして周りに迷惑をかけてしまうのが怖い。
そういう優しさや思いやりがメインの内容で、主人公に必要とされることで、少しずつヒガさんが変わっていくところが良かったなと思います。
キャラ的には意外と真面目で純情なので、主人公と付き合うことになった時はきちんとメンバーに報告したり、照れた顔も可愛いし、そして諏訪部さんの声だしハズレないなと思います!
見た目は怖そうだけどずっと主人公を大切に守ってくれるヒガさんはとっても素敵でした。
オススメのセリフは迷ったのですが、最初にも書いた「バーカ」が好きなのでこれを選んでみました。
ヒガさんではありませんが、ナラカの「似合ってるよ、リンカ。ちょー可愛い。ぎゅってしたいくらい!」もオススメです。
- オススメのセリフ
…… バーカ。
なにいってんだよ。今だって、オレを殴って正気に戻したろ?いーや、オマエ自分が思ってるより馬鹿力だからな。
冗談に決まってんだろ。本気にすんなっつの。 …… ありがとな。
シキシマ(CV:石田彰)
キャラクター
ワルイ子でもイイ子でも風紀委員でもないカワッタ子と呼ばれる立ち位置でいつも一人穏やかに絵を描き続けている少年。
神出鬼没で学園のありとあらゆるところに出没する。
その立ち位置同様その言動もまたかなり変わっている。
学園にやってきた際に持っていた持ちモノは『スケッチブック』。
内容
サンズの一件を見ていたシキシマは、真の希望を見たと興奮しますが、その様子が今までと違っていて何だか不安になってしまう主人公。
そんな中、BAD APPLESはワルイ子をやめていく人が続出し、こんな時はシキシマの声を聞きたいと美術室へ向かう主人公ですが、シキシマはあの日以来ずっと何かに憑りつかれたように絵を描き続けていて、笑顔を見せなくなっていました。
シキシマは絵で愛を伝えて“卒業”したいと思っていますが、シキシマにもう会えなくなってしまうのが嫌な主人公は、それを止めようとし …… 。
感想
石田さんの癒し系キャラは久しぶりでしたが、凄く癒されました!
ただ、その分エンディングが不完全燃焼で …… 。
内容は、シキシマさんは大正時代の人で、病に侵されて死んでしまった人物です。
シキシマさんは子供の頃から人と違った価値観に悩み、アトリエでひっそりと死んでいった祖父のように誰にも理解されなくてもいいと心に蓋をして絵を描き続けていた。
自分の言葉は誰にも届かないと自分から人との間に壁を作り、学園でも正式にBAD APPLESにも入らないし、諦めたような笑い方をしているんです。
いつも色の無い誰にも理解されない絵を描くんですが、それにも理由があるという話でした。
キャラクターは癒し系なのですが、内容はかなり寂しい話でした。
自分を偽っても孤独になるだけだから、無理をして他人の中にいるよりは最初から一人で構わない。
最後は誰にも理解されないのが嫌だとシキシマさんは前向きになるのですが、ただ最初にも書いた通り、エンディングが …… 。
シキシマさんは不治の病で死んでいるので、無事に生還したとしても結局は死んでしまいますし、主人公とは生まれた時代が全く違うんです。
エンディングはこうするしか方法がなかったのかもしれませんが、正直シキシマさんを重ねるのは可哀想だと感じてしまいました。
これはシキシマさんだけではなく、他のキャラにも言えるんですけどね。
ですが、石田さんの「リンカ」と呼ぶ声は好きでしたし、みんなや自分のことを花に例えて話すところが凄くシキシマさんらしく魅力的だったので、オススメのセリフも花に例えたこのセリフを選んでみました。
- オススメのセリフ
一枚の絵を描きあげられるかどうかも分からない、僅かな時間。以前の僕はそれを無為に潰してしまった。
だけどここで、希望と機会が得られた。絶望の中で朽ちていた花が光と水を与えられたんだ。
だから僕は戻るよ。最後の瞬間まで本当の意味で花開いていたいから。生きて、いたいから …… 。
サトル(CV:花江夏樹)
キャラクター
主人公と一緒に学園に入学した少年。
重度の勉強ノイローゼで、学園にやってきてからもここがどういう場所なのか自分がどうなったのかなど気にもせずにとにかく勉強し続けている。
学園にやってきた際に持っていた持ちモノは『勉強道具』。
内容
サンズの一件で、やっと自分が死んでいると気付いたサトル。
今まで主人公たちのことを同じ中学の誰か、というか誰の顔も見ていなかったから現状を分かっていませんでした。
何もかもを犠牲にして勉強を頑張ってきたけど、死んでしまったことで無駄になったと気付いたサトルは、イイ子になってもう楽になりたいと考えるようになります。
主人公は風紀委員であるにもかかわらず、サトルがイイ子になってしまうのを止めようと説得していると、そこに白髪の風紀委員が現れて …… 。
感想
サトルくん、実は可愛い子じゃないですか!!!
正直、他のキャラの声優さんが好みだというので一番最初に攻略したのですが、花江さんの声で余計に可愛く感じました!
サトルくんは精神的に不安定な母のために苦手な勉強を頑張る男の子で、無理をして死んでしまった。
勉強をしなければならないという強迫観念にとらわれ、自分自身を見失ってしまっているという内容です。
スタート時、サトルくんは人の言う事を全く聞かず、目つきも危ない感じだったので個人的にあまり好きになれなかったんです。
ですが話が進むにつれて分かっていくのですが、サトルくんはもともと凄く優しい性格をしていて、母を悲しませたくない、母のそばにいたいと漫画もゲームも友達も諦めて勉強していた真面目で不器用な子でした。
それが主人公と少しずつ会話出来るようになったと思ったら、自分が死んでいると気付いて今まで努力してきたのは無駄だったと絶望してしまうという話でした。
主人公も言っていましたが、努力が全部実るわけじゃないけど腐らないで努力するサトルくんは凄いし、プレイしていくうちにどんどん可愛く思えていくので、ゲームとはいえ可哀想な設定ではありましたが、エンディングでは笑顔のサトルくんを見ることが出来たので良かったなと思います!
オススメのセリフはネガティブだったサトルくんが頼もしく思えるこのセリフを選んでみました。
サトルくん編をクリアしたら、ホットミルクを飲んでチョコバナナが食べたくなりました。
- オススメのセリフ
○○がさっきいった。戦わなければ負けないけど、勝つこともできないって。
この人はそれに、ここに来てから気づいたって。 …… 変わったって。
だからボクも …… 。○○みたいになりたい。
自分のつま先だけ見てないで、差し伸べられた手に気づけるようになりたい …… 。
白髪の風紀委員(CV:立花慎之介)
キャラクター
風紀委員の一人である白髪の少年。
他の風紀委員と同じく仮面で顔を隠し、風紀委員専用の特殊制服に身を包んでいる。
その言動からはまるで機械や人形ででもあるかのように感情が感じられない。
先生に与えられた風紀委員専用の特殊な武器である『定規』を手に、ワルイ子たちの前に立ちはだかる。
内容
風紀委員は迷える子羊を導く羊飼いのような役割なので、校則を守るように説得し、聞き入れないようなら矯正することがワルイ子のためになると考えていた白髪の風紀委員。
しかし彼の心を見てしまった主人公は、彼がワルイ子に自分を重ねているだけで本当に憎んでいるのは自分自身なのだと本人に指摘します。
主人公に指摘され、自分の本当の気持ちに気付いた白髪の風紀委員は、BAD APPLESのもとを訪れ、仮面を外し「 ――― 彼女を、君たちの仲間にしてもらいたいんです」と言い出して …… 。
感想
このゲームは白髪の風紀委員のためにあるんじゃないでしょうか。
白髪の風紀委員が一番良い内容だと思ったし、主人公じゃないとこの人を救うことが出来ないから …… 。
白髪の風紀委員編は、自分がほんの一瞬でも心を揺らした相手はただ一人の例外もなく全員死んでいってしまう。
自分は“死神”だから孤独でなくてはならないし、誰にも心を揺らせてはいけないと心を閉ざしてしまった少年の話でした。
ネタバレレビューなので詳しく書きますが、白髪の風紀委員さんは自分が生まれたのと引き換えに母親が死んでしまった。
そして父親は、家が火事になり、一人逃げ遅れた自分を助けるために炎の中に飛び込んで死んでしまった。
一緒に暮らすようになった祖父母、話しかけてくれたクラスメイト、学校の先生、自分を好きになった少女など、ことごとく死んでいきます。
さらに主人公が事故に遭ったことにも関わっているという、プレイしていてどんどん暗くなっていく『ARMEN NOIR』みたいな流れでした。
なので“死神”と呼ばれた白髪の風紀委員さんを助けるためには主人公が“生還”しなくてはならなかったし、他のキャラクターも何かしら闇の部分や辛い過去を背負っていますが、白髪の風紀委員さんは愛することも愛されることも望んではいけない可哀想な設定なので、一番幸せになって欲しいと感じたのはこの白髪の風紀委員さんでした。
これ以上は詳しく書きませんが、白髪の風紀委員編のエピローグまでプレイして欲しいなと思います。
立花さんの淡々とした声から徐々に変化していくところも注目して下さい!
- オススメのセリフ
君に持っていて欲しいんだ。
俺の魂は、死と絶望に呪われている。俺のそばで、希望は生きられない。
だから …… 君は俺のそばにいてはいけない。君だけは …… どうか、幸せに …… 。